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まぼろしの「指摘」 ― 関市の水道課職員の収賄事件(その3)

2013-06-01

職員が逮捕という事態に、現市長の責任は免れません。

これは当然の話です。

しかし、単純に現市長の責任を問えば済むという問題でもないということがわかりました。

水道の緊急修繕工事の14年間推移を見たところ、

第6代市長である尾関市長の下では、問題の業者の受注額が大幅に低下していました。

贈賄業者が受注を飛躍的に伸ばしたのは第5代市長の4年間であり、

4期を務めた第4代市長のときにも著しい発注の偏りがありました。

長年にわたって問題は存在し、

第4代、第5代市長の時代から放置され続けてきたのです。

監査委員会も、そして私自身を含む議会も、

これをチェックできなかったことを反省しなければなりません。


新聞報道によると

「2011年に、発注の偏りを監査委員が指摘した」とのこと。

その報道を受けて、

市民の方から、きびしいご指摘をいただきました。

「市長や議員は、監査委員の指摘があっても放置していたのか」

「なぜ市長はそのときに手を打たなかったのか」

「議員は何をしていたのか」

当然のご指摘だと思いました。


しかし、報道された「監査委員の指摘」なるものを、

私は知りませんでした。

ほかの議員も知りませんでした。

おそらく市長も知らなかったのではないかと思います。 

なぜ知らなかったのか。


職員逮捕の2日後、5月19日の毎日新聞は社会面で、

岐阜・関市水道汚職:監査委が発注偏りを指摘 11年に- 毎日jp(毎日新聞)

という記事を掲載しました。

翌5月20日には、中日新聞も社会面に、

「水道工事汚職 発注偏り 2年前指摘 監査委員 今春まで改めず」

という記事を掲載しました。

記事を読んだ人が、

「市長も議員も、『監査委員の指摘』を無視した。」

と思われるのは、もっともな話です。

私も監査委員の報告書を見落としたのかと、まず最初に思いました。

ところが、調べてみたところ、

一部の業者に発注が偏っているという『監査委員の指摘』なるものは、

どこにも存在しなかったのです。


 

監査委員、監査委員会事務局、水道課、新聞社など、関係のある10人くらいの方に、『2011年の監査委員の指摘』について話をききました。

驚いたことに、「2011年の監査委員の指摘」を裏付ける記録は監査報告書その他を探しても、ひとつも出てこなかったのです。 

私の結論をまとめると、

「発注の偏りに関するやりとりは、ある監査委員とある水道課職員の記憶の中にあった。」

ということです。

「監査委員の指摘」の時期についても、毎日新聞は「2011年ごろ」、中日新聞は「2011年」としており、微妙な違いがありますが、いつのことかはっきり特定することができません。

考えてみれば、そもそも監査委員は関市に2人しかいません。公職にある監査委員が問題点を「指摘」したのなら、氏名を伏せる理由などないはずです。

新聞報道で指摘した監査委員の氏名が公表されなかったのは、「指摘」を裏付けるはっきりした根拠が確認できなかったからではないかと思います。

ある監査委員や一部の担当職員が「発注に偏りがある」という認識を以前から持っていたということを明らかにしたという点で、この新聞報道には意味がありました。

しかし、「監査委員が指摘した」という報道の仕方は言葉足らずで、ある種の誤解を招き、結果として世論をミスリードしかねないものです。

「発注の偏り」に関するやりとりはあったかもしれませんが、それは「緊急時のやむを得ない対応の結果」ということで片付いてしまい、監査委員もそれ以上は問題にしなかったというのが、本当のところではないかと思われます。

もしも監査委員が問題視したのなら、それは「監査委員の指摘事項」として、報告書に記載されたはずだからです。


市の監査委員会は年に一度の決算監査のほかに、

毎月、月例監査をおこないます。

その監査の過程でおこなわれる監査委員と担当職員の間の無数のやりとりの中に、今回の収賄事件につながる発注の偏りについての話題があったことなど、当事者以外、誰も知らなかったのです。

報道された「監査委員の指摘」は、「まぼろしの指摘」だったということです。

新聞報道を読んで、

「市長や議会は、『監査委員の指摘』を無視し、問題を隠蔽した」

と誤解している方に、このことを知ってほしいと思っています。


「監査委員の指摘」報道で誤解をしている人の1人に、

この話をしたところ、びっくりしてみえました。

今度は、逆に、

「それなら市長は、はめられたのではないか」

と言われました。

今回の贈収賄事件が明るみになったのも、

「監査委員の指摘」報道も、

現市長に政治的なダメージを与えるために、

誰かが仕組んだのではないかとおっしゃるのです。

今のところ何とも言えません。

「新聞記者がそんな悪意をもって記事を書いたとは思えない」

と、とりあえず自分の印象を伝えておきました。

情報には様々な解釈が与えられ、憶測を呼びます。

情報を正しく解釈し、うまく伝えることの難しさを思います。


 

「市長は何も手を打たなかったのか」

という点については、若干、補足説明を加えておきたいと思います。

現市長が就任してから、1年半余りの間に、

①緊急修繕工事の随意契約について、形式的な「相見積もり」を廃止し、業者指定とした。

②指定した業者の言い値で支払うのではなく、「単価契約」を導入した。

③緊急修繕工事の発注先を割当制にして、職員の裁量任せにするのを改めた。(これは今回の事件と関連した措置)

などの改善措置が水道部でおこなわれたそうです。

それで十分であったか、あるいは適切であったかという問題は別にして、

こうした改善の取り組みが、それ以前の市長のときにはなかったことも、事実として見ておく必要があると思います。


 

以上が、今回の事件をめぐって、これまで私なりに調査し、考えたことです。

贈収賄事件の全容解明は、司法の手に委ねられましたが、

行政としては、今回の事件の教訓をどう引き出し、

今後にどのように生かすかが問題で、

それが今度の議会の一般質問の課題だと考えています。

とても難しく感じますが・・・。


思った以上に、長くなってしまいました。

「さわたり君の話は長すぎる」とか、

「そんな長い文章、読んでもらえんぞ」とか、

「写真を入れたらどう?」とも、

言われたのですが、

やはりこんな風になりました。

最後まで読んでくださってありがとうございます。


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