下水道課の随意契約
2013-06-28
関市役所の水道部の下には、水道課と下水道課があります。
関市役所公式ホームページで、6月20日に水道課が、6月26日に下水道課が、随意契約についての情報を公表しました。
尾関健治市長は、元水道課職員の不祥事を受け、6月13日の市議会答弁で、随意契約の情報公開を行うことを表明し、「水道部については、先行して情報公開したい」としました。その約束が果たされたということです。
下水道課にも、随意契約がたくさんあります。公表された平成21年度から23年度までの3年間のうち、平成23年度分をざっとみてみました。
平成23年度の随意契約は、156件です。
契約の中に「単価契約」となっているものが26件含まれています。これは、出来高払いなので、今回の情報公開では、実際にいくらかかったか不明です。
単価契約の26件を除いた130件の総額は、私の集計ですが、2億7千258万132円になりました。
契約形態は、
業者指定 63件
見積3社 83件
見積2社 3件
見積1社 4件
となっています。
「見積1社」というのが不可解で、担当課に「業者指定と見積1社はどう違うのですか」と尋ねました。回答は、「どちらも同じ」ということでした。急いで情報公開したため、整理が不十分だったということのようです。
随意契約の中に、「業者指定」がたくさんありますが、下水道事業には、特有の事情があります。一般廃棄物処理業者 との関係が 合特法 という法律で定められているからです。
合特法の正式名称は、「下水道の整備等に伴う一般廃棄物処理業等の合理化に関する特別措置法」といいます。全部で9条から成る法律です。
一般廃棄物という言葉はふだんの生活では使いませんが、産業廃棄物以外の、家庭などから出る廃棄物全般を指しています。一般廃棄物処理業者は、自治体の許可を受けて、し尿やごみなどの収集・運搬・処理等をおこなう民間事業者です。一般廃棄物の処理は自治体の責任ですが、下水道の普及にともなって、特に、し尿の汲み取りの需要が減っていく過程で、事業者がなくなってしまったら困ってしまいます。その不都合を防ぐためということで、1975年(昭和50年)に合特法が施行されました。
合特法は、し尿の汲み取りを行う事業者に
「代わりの公共事業の受注」
「金銭補償」
「職種転換のための職業訓練支援」
などの便宜を図ることを自治体に許可した法律です。
一般廃棄物処理業者に、汲み取りの仕事を継続してもらうと同時に、その仕事が減ってもやっていける会社に生まれ変わってもらうよう「合理化」をすすめてもらう、それに行政が協力をするという趣旨です。
ですから、自治体が一般廃棄物処理業者を特別扱いして「便宜を図ること」があっても、「合特法によるものです」と言うことで、問題にならなくなってしまうというわけです。
今回、公表された随意契約の相手方の中で、合特法の対象となっている事業者は4社です。その4社の平成23年度の随意契約受注額(単価契約分を除く)を調べてみました。括弧内は、全体に占める比率です。
美濃設備(株) 104,782,700円(38.44%)
中央清掃(株) 61,383,000円(22.52%)
(有)関環境サービス 43,274,700円(15.88%)
(有)梅村総業 15,548,400円(5.70%)
この金額は、業者指定による随意契約と、相見積もりによる随意契約の合計です。4社で、随意契約の82.54%を占めています。これに、単価契約によって支払われた金額を加えると、4社の割合は更に高くなると思われます。
次に、4社の「業者指定」による受注額を集計してみました。括弧内は、その業者が市と結んだ随意契約全体に占める「業者指定」の金額の比率です。
美濃設備(株) 96,351,200円 (91.95%)
中央清掃(株) 56,817,600円 (92.56%)
(有)関環境サービス 40,962,600円 (94.66%)
(有)梅村総業 15,012,900円 (96.56%)
4社とも、9割以上の仕事を、「業者指定」によって得ていることがわかります。
合特法ができてから、40年近くになります。民間事業者が自治体から「業者指定」で継続的に仕事が保障される仕組みはほかにありません。これほど自治体に優遇されている業種はないと思います。合特法による措置は、下水道課の事業以外にもあります。資源ごみの回収もそのひとつです。合特法にもとづく「代わりの公共事業」として提供する仕事を、行政は「転換業務」と呼んでいます。
これは行政に複雑な影響を与えます。
6月11日に、関市議会で公明党代表が、来年度の指定ごみ袋の値上げ問題にからめて、「清掃事務所の民間委託」について質問しました。市長は、「合特法の転換業務も含め検討したい」と答弁しました。
6月21日の定例会閉会後の議会全員協議会では、ごみ処理の担当である市民環境部から、プラスチックごみのリサイクル事業を来年度から廃止する方針が説明されました。リサイクル率が低く、費用対効果を考えると効率が悪いのでやめるとのことです。行政は経費削減になるかもしれませんが、来年度、指定ごみ袋が1枚6円から50円になり、あわせてプラスチックごみを燃えるごみとして出すとなると、住民にはダブルパンチです。
私は、全員協議会で「プラスチックごみの回収をやめると、合特法による転換業務に影響がでるか」と質問しました。
回答はイエスでした。
プラスチックごみの回収は、合特法による転換業務として、一般廃棄物処理業者に割り当てられているのです。関市が回収をやめることで、年間2000万円くらいの仕事が減るそうです。その代わりの仕事を考えて、提供しなければならないようです。
そこに出てくるのが、清掃事務所の民間委託です。清掃事務所の仕事が、民間委託になる場合に、入札にかけず、「業者指定」で業務委託をすることになるかもしれません。その可能性を示したのが11日の市長答弁ということになります。
関市は平成17年度を最後に、現業職員(技能労務職員)の新規採用をやめています。公務員の削減のためです。清掃事務所の人手が足りなくなってきたから民間委託に移行するということになるだろうと思われます。学校給食センターの調理業務を民間委託するのと同じ理由です。
公共の仕事を民間にまかせれば、競争原理が働き、安い経費でよい仕事ができるとよく言われます。しかし、実際には、そんな単純なものではありません。
地方都市ではほとんど競争原理が働かず、民間委託による経費削減メリットはあまりなくて、公務員の代わりに、安い賃金で働く人が増えるだけのように思います。正規雇用がどんどん非正規雇用に置き換えられていくのです。そして、本来、営利追求の対象ではない公共の仕事で、ごく一部の会社が利益を得るという形になります。
指定ごみ袋の値上げ、プラスチックごみのリサイクル回収の廃止、清掃事務所の民間委託と公務員削減、合特法の転換業務、そして随意契約の取り扱いが、複雑にからみあっています。
参考:合特法の目的
この法律は、下水道の整備等によりその経営の基礎となる諸条件に著しい変化を生ずることとなる一般廃棄物処理業等について、その受ける著しい影響を緩和し、併せて経営の近代化及び規模の適正化を図るための計画を策定し、その実施を推進する等の措置を講ずることにより、その業務の安定を保持するとともに、廃棄物の適正な処理に資することを目的とする。 (下水道の整備等に伴う一般廃棄物処理業等の合理化に関する特別措置法(昭和五十年五月二十三日法律第三十一号)第1条)
リンク
*関市水道課の随意契約の公表(2013年6月20日)
http://www.city.seki.lg.jp/0000004619.html
*関市下水道課の随意契約の公表 (2013年6月26日)
http://www.city.seki.lg.jp/0000004629.html
*合特法の全文
http://law.e-gov.go.jp/htmldata/S50/S50HO031.html
コメント 0