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時給を引き下げる民間委託

2013-08-17

岐阜県の最低賃金「時給713円」という仕事を、みなさんは具体的にご存じでしょうか。

会った人に、いきなり「あなたの時給はいくら?」とお尋ねするのも失礼な話なので、なかなか聞けるものではありません。それで、身近な人が時給いくらで働いているのか、私もあまり多くは知りません。

先日、関市の公共施設の管理をまかされている民間会社ではたらいていたという人と話をする機会がありました。

「時給はいくらでしたか?」

と、思い切って尋ねてみました。

「713円やったよ。」

と、あっさり教えてくださいました。

「どうして、そんな中途半端な額なのかわかりますか?」

と尋ねてみました。

「どうしてなんかわからんけど、私も713円なんて細かい決め方やなあと思っとったんやて。」

「最低賃金というものがあって、日本では都道府県別に決めているんやけど、713円というのは岐阜県の最低賃金です。それより1円でも安くすると違法になってしまう。できるだけ時給を低くすると713円ということになります。」

「そんなら、サイテーってことやね。やっぱり何かわけがあると思ってたけど、やっぱりねぇ・・・・」

このやりとりを隣に居て聞いていた人も、

「委託を受ける会社はそうやって儲けとるんやね。どうせ、市のやることはそんなことやわ。」

と残念そうな顔でした。

関市では、御多分に洩れず、「行財政改革」の一環として、公共施設の管理運営などが次々に民間に委託されてきました。

その民間委託が、働く人の時給を最低賃金にまで引き下げる結果になっています。


実を言うと私は、「最低賃金が713円だから、実際には720円くらいが最低時給なのかな」と、さしたる根拠もなく思っていたのです。

しかし、それは甘い考えでした。

現実に、最低時給は713円なのでした。

しかも、それは市の委託する仕事に関する賃金でした。

民間委託による賃金は安いという認識はありましたが、まさか最低賃金だとは、うかつにも気づきませんでした。

まさに”灯台もと暗し”です。


 

もし関市が臨時職員(正式には「日々雇用臨時職員」と呼んでいます)として直接雇用をしたら、どうなるのでしょうか。

時給は713円ではなく、最低でも760円だったはずです。

関市の臨時職員の時給は、次の4段階に分かれています。

760円   事務補助員等

820円   調理員、レセプト点検員等

950円   保育士、児童指導員、栄養士(子ども家庭課)、清掃員等

1160円  看護師、歯科衛生士、栄養士等

技能・経験・資格が求められる専門性の有無、責任や負荷の重さに応じて、時給が高くなるように設定されているようです。


 

公務の民間委託は、低賃金の不安定雇用を生み出しています。

行政は民間委託による公務員定数削減とコスト削減を期待し、委託を受けたい民間事業者は人件費削減等で行政のコスト削減要望に応えようとするからです。

その結果、働く人の賃金は、最低賃金にまで引き下げられるということがおこっています。

賃金を抑えることによって、事業者は、儲けを追求する仕事ではないはずの公共の仕事からも、一定の儲けをひねりだすのです。そういうことになってしまうというのが民間委託です。

ごく一部の限られた民間事業者が、本来は公務員が行うべき仕事を担って利益を得ます。

安定的に受注できれば、これほどリスクの少ない事業はないでしょう。

言い換えれば、公務労働の民間委託は、新たな利権を創出しているという側面を持っています。

こういうシステムがすぐれているとは、私には思えないのです。

「民間でできることは民間に」というスローガンで、だれが幸せになるのでしょうか。

なぜ「公務労働」というものが存在するのか、

なぜ「公務員」という存在が必要なのか、

もう一度、根源から考えてみる必要があるのではないでしょうか。


 

関市は、来年の秋から、学校給食センターの調理業務を民間委託にすることを検討しています。

民間委託になれば、これまで市が直接雇用してきた正規職員を中心とするプロ集団は解体されます。

そして、民間事業者が集めた低賃金パート職員に置き換えられるでしょう。

それで学校給食がよくなるとはとても思えません。

地域の雇用環境悪化や賃金水準の低下に拍車をかけることにもなるだろうと思います。


 

公務員の人件費が”ムダなもの”という呪縛を解き、

国がすすめる数値目標ありきの、行きすぎた公務員削減論をみなおすべきだと、私は思っています。

 

 

 

 

 


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