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長く深い祈り

2013-08-09

8月6日と9日は、広島・長崎の原爆記念日です。

それから約1週間で、日本は終戦を迎えました。

68年目の夏。

私も含めて日本人の多くが、戦争を直接体験していない世代になっています。

一昨日の夜は、CBCテレビの「テレビ未来遺産”終戦”特別番組『生きろ』~戦場に残した伝言~」を観ました。「玉砕主義一色の時代に『生きろ』と訴えた」という、島田叡沖縄県知事の最後の5カ月を、実話をもとに描いたドラマです。

帰宅が遅くなり、終わりのほうの部分しか観られなかったのですが、戦争を二度と繰り返さないために、私たちは何をなすべきかを改めて考えさせられるドラマでした。


 

大学生のとき、指導教官の筒井健雄先生から、

「私は戦争の原因は3つあると思う。猿渡君、何だかわかりますか。」

と尋ねられたことがありました。

ある日の午後、先生の研究室で2人で話をしていたときのことでした。

その先生の問いと、温厚な先生のいつもとは違った強い眼差しを今も思い出します。

自分がそのとき何と答えたのか忘れてしまっているのですが、

おそらくそのときの私は、先生が考える3つの戦争の原因を答えられなかったと思います。

 


 

筒井先生がそのとき話してくださった戦争の原因とは、

経済的対立、民族的対立、宗教的対立

どんな戦争も、人間同士の対立からおこり、それは、この3つの対立に根ざしているというお話でした。

武力で相手を屈服させる以外の方法で、その対立を乗り越えることができるかどうかが人類に問われている。そんなふうに私は先生の話を受け止めたのでした。自分の視野がぐっと広がったような気持ちになったのを覚えています。あれから、もう30年以上になります。


 

日本国憲法第9条をしばしば読み返しています。

第9条の条文を染め抜いた手ぬぐいをハンカチ代わりに持ち歩いて、日に何度も読みました。

NHKテレビでみた8月6日の広島の平和記念式典を思い出します。

松井一實広島市長も、安部晋三首相も、平和を望み、核兵器廃絶を訴えました。

平和と核兵器廃絶を訴える広島市長のあいさつには、聴く人の心を打つ力があります。

しかし、安部首相のあいさつには、そんな力がない、心に響かないと私は感じました。

ふたりの言っていることは

「似ているようで違う」

ということに、多くの日本人は気づいていると思います。


 

その違いは、憲法9条に照らせば、はっきりとわかります。

国権の発動たる戦争と、武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する。

(日本国憲法第9条第1項抜粋)

広島市長は「戦争放棄」はもちろんのこと、「武力による威嚇又は武力の行使」の「放棄」にも明確に同意しています。

しかし、安部首相は、同意を表明していないのです。

その核心への言及を注意深く避ける首相のあいさつは、平和をねがう人々の心を打つものにはならないのです。


 

昨年発足した長崎大学核兵器廃絶研究センターによると、

世界の核弾頭の保有数は、1万7300発(2013年8月1日現在)だそうです。

そのうちロシア、米国、中国の「退役、解体待ち」の7100発を除くと、実質は10200発。

使える核弾頭10200発の内、米国が4650発(45.6%)、ロシアが4500発(44.1%)を占めます。 

かつての冷戦で、はげしい核軍拡競争を繰り広げた米国とロシアが大部分を保有しています。

そして核武装をしている国は、わずか9カ国。

米国、ロシア、中国、フランス、英国、イスラエル、パキスタン、インド、北朝鮮です。

国の安全を核兵器に頼ろうとする国は世界の中でほんの少数です。

国際社会の圧倒的世論は、核兵器廃絶を支持しています。

 


 

第二次大戦後の世界で、米国は、核兵器を含めて世界一の武力を誇り、戦争や軍事介入など、「国権の発動たる戦争と武力による威嚇又は武力の行使」を、最も多用してきた国です。そのための軍事費も飛び抜けています。

そういう国の軍隊と行動を共にして海外で日本の武力をつかって戦ってもよいことにしたいというのが、安倍政権がすすめようとしている「集団的自衛権の行使」です。

集団的自衛権、自公が月内に協議

(毎日新聞) 2013年08月08日 23時09分

 安倍政権が検討している憲法解釈の変更による集団的自衛権の行使容認について、自民、公明両党が8月中に実務レベルの協議を始めることが分かった。自民党幹部が明らかにした。安倍晋三首相は早ければ秋の臨時国会の答弁で行使容認を表明する検討に入っているが、公明党は強く反対しており、事前の協議を急ぐことで距離感を埋める狙いがあるとみられる。(以下略)

集団的自衛権の行使は、日本国憲法と両立しません。

実質的に9条改憲に等しい”解釈改憲”を、安部首相は「表明」しようとしているのです。

公明党は、「実務レベルの協議」で何を決めるというのでしょうか。

公明党が筋を通すなら連立政権を解消しなければならないような問題であって、「距離感を埋める」ような話ですませて、あいまいにはできないはずです。


 

平和を求める人々のねがいと、「二度と戦争をしない」という誓いは、日本国憲法に結晶しています。

米国の「核の傘」をあてにして、米軍による「抑止力」に頼らなければ平和を確保できないという「抑止力信仰」の立場に立って軍拡をすすめては、戦争をなくすことはできません。

武力には武力で対抗するという道に未来はありません。

未来を託せるのは、憲法9条が指し示す道です。

それは、「玉砕主義一色の時代」に「命は宝」、「生きろ」と訴えた沖縄県知事のように、

同じ時代に命がけで「侵略戦争反対」を掲げ屈しなかった日本共産党の私たちの先輩のように、

決して譲ることのない決意で、すすむべき道だと思うのです。

憲法9条の誓いと、平和へのねがいを、長く深い人類の祈りとして次の世代に引き継いでいくこと。

その思いを新たにする8月です。

 


 

***** リンク *****

長崎大学核兵器廃絶研究センターは、2012年4月1日に発足。

略称はRECNA(レクナ)。

ホームページで有益な情報発信をしています。

本文中に紹介したデータは、

レクナの「世界の核弾頭一覧(2013.08.01現在)」から引用させていただきました。

下記のページにデータの詳細があります。

http://www.recna.nagasaki-u.ac.jp/nuclear_list.html

 

 

 

 

 

 

 


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