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景気はよくなるか―関市景気動向調査の結果報告

2013-08-22

8月15日に内閣府が公表した「月例経済報告」(平成25年8月)を見ると、「景気は、着実に持ち直して」いるそうです。

景気は、着実に持ち直しており、自律的回復に向けた動きもみられる。
先行きについては、輸出が持ち直し、各種政策の効果が発現するなかで、
企業収益の改善が家計所得や投資の増加につながり、景気回復へ向かうこ
とが期待される。ただし、海外景気の下振れが、引き続き我が国の景気を
下押しするリスクとなっている。 

それより以前の「地域経済動向」(平成25年5月28日)の「地域別の動向・東海」でも、

 東海地域では、景気は持ち直している。
・ 鉱工業生産は持ち直している。
・ 個人消費は持ち直している。
・ 雇用情勢は改善している。

”アベノミクス”の経済効果が関市にどのようにあらわれているのでしょうか。

平成25年度関市景気動向調査 結果報告」(関市経済部商工課)が、7月24日に公表されました。(上の色の違う文字の部分をクリックすると、原文の全10ぺーじを表示します。)尾関健治市長の定例記者会見で発表されたものです。関市公式ホームページの新着情報には7月30日付で掲載されました。

この調査は、関市の製造業414事業所を対象に5月~6月にかけておこなわれたものです。

従業員50人以上の主要な事業所77社には訪問調査がおこなわれ、回収率100%。この訪問調査には関商工会議所の協力を得ています。

ほかの337事業所には調査票を郵送し、174社から回答を得ました。回収率は51.3%です。対象としたのは「従業員7人以上」の製造事業所とのこと。

全体では、414事業所中、251事業所の回答で、回収率は60.6%です。

251事業所で仕事に従事する人数は不明ですが、「主要企業」を含んでおり、回収率からみて関市の製造業の傾向をある程度示している調査だと思います。

「調査結果総括」では、売上高の増減に着目してデータを示しています。

売上高が増加(やや増加を含む)と回答した事業所

8%(H21)→36%(H22)→37%(H23)→41%(H24)→37%(H25)

売上高が減少(やや減少を含む)と回答した事業所

43%(H24)→40%(H25)

売上高が不変と回答した事業所

16%(H24)→23%(H25)

このような変化をふまえて次のように述べています。

「景気の悪化に一定の歯止めがかかり、回復傾向にある企業が増えてきている」

「景気回復の波に乗れない企業が多いのも現状」

「業種や企業規模によっては依然として厳しい状況が続いているところも多い」

「売上高が増加」の企業が増えたのは、どうも民主党政権の時代のようです。平成25年度は前年度より4ポイントさがっていますが、どう見ればよいのでしょうか・・・。

「景気悪化に一定の歯止めがかかっている」ということを否定するつもりはありませんが、問題は、「回復傾向にある企業」がこの先も増え続けるのか、景気がよくなって、雇用環境が改善し、賃金があがるところまでいくのだろうかということです。

アベノミクスを評価し支持する人は、このままどんどんよくなっていくと期待している、あるいはそう信じたいのだと思います。

しかし、そうなるとは、私には思えないのです。

やはり、景気の底上げには内需拡大に向かうことが必要だと思いました。

 


関市景気動向調査の結果報告をもう少しくわしく見てみます。

報告は、製造業を、地場産業の「刃物」、「金属」、「その他」に三分類するとともに、輸出との関連で分析しています。

「金属」とは、「機械器具、輸送用器具、金型・焼き入れ他、プレス、電気器具、その他」を指します。関市では、生産額でみると、機械器具、郵送器具で、「金属」の4割近くを占めます。

売上増の事業所は、主に金属を中心とした輸出企業で、アベノミクスによる円安の効果で、輸出が好転したとみることができます。

しかし売上増の事業所が37%であるのに対し、収益が増加したのは31%です。それは円安が海外から輸入する原材料価格を押し上げ、売上が伸びても利益につながらない場合があることを示しています。

原材料価格についての次の部分に注目しました。

原材料価格については、上昇していると回答した企業が全体の63%を占めており、さらに今後の見通しでは75%と増えていることから、円安などの影響により今後も原材料価格の高騰が続くと見込む企業がほとんどである。特に輸出を行っていない企業では、円安による原材料価格の高騰が直接収益に大きな影響を与え、今後に不安を抱かせる深刻な問題となっている。(2頁から抜粋)

製造業界の景況感については

21%の企業が好転、37%の企業が悪化と感じており、依然として悪化が好転を上回る状況は続いているが、前回調査と比較すると好転が増え、悪化が 減っていることから、景気が回復傾向にある様子がうかがえる。しかし、業種別にみると、金属関係では好転と感じている企業が多いが、刃物関係や食料品、衣服・繊維製品、紙製品・印刷業、化学工業製品製造などでは悪化と感じている企業が多く、業種によって景況感の違いが大きいと言える。(同上)

関市の製造業の内、金属を中心とする輸出企業の一部は利益を増加させているが、それは製造業の3割で、今後景気はよくなると感じている企業は2割程度です。

のこりの8割の企業は景気がよくなると感じていないことになります。

「輸出を行っていない企業」が、「深刻な問題」を乗り越えるためにはどうしたらよいのかが重要です。アベノミクスは何も対策を示していないというより、地域経済の問題を深刻化させるのではないでしょうか。


関市の景気動向調査は製造業だけを対象にしたものですが、もちろん、産業が製造業だけで成り立っているわけではありません。製造業の事業所は関市全体の事業所のどのくらいの割合を占めているのか調べてみました。資料は関市が毎年出している「関市の工業」です。

関市内の事業所数 5235カ所 内、製造業1433カ所(27.4%)

関市内の従業者数 43029人 内、製造業17416人(40.5%)

※出典:平成24年経済センサスー活動調査(速報値)(平成24年2月1日現在) 公務の事業所数や従事者数は、速報値が公表されていないため含まず。 

従業者数を男女別にみると、男性従業者の47.4%、女性従業者の32.1%が製造業ではたらいています。関市では製造業が大きな比重を占めています。

一方、製造業以外の事業所数は全体の7割で、そこで働く人は全体の6割になります。

アベノミクスの恩恵はごく限定的なもので、その効果が全体に波及する保障はどこにもないということを、関市の景気動向調査は示しています。さらに働く人の賃金があがるかというと、きわめて難しいと感じます。

このまま、都合の良い経済指標をとりあげ、都合の良い解釈で「景気がよくなった」ということにされて、消費税を増税されてはたまりません。


 

***** リンク *****

「平成24年度 関市の工業」(関市 平成25年3月発行)

http://www.city.seki.lg.jp/cmsfiles/contents/0000003/3630/kogyo_h24.pdf

 

関市の工業統計(平成22年分)(市独自集計結果 平成25年7月5日)

http://www.city.seki.lg.jp/0000004701.html


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