コバエで学校給食が中止に
2013-10-10
学校給食の異物混入が続いています。先月は可児市のコバエの混入が大きなニュースになりました。昨日は、関市の学校給食センターでコバエが大量にみつかり、給食の提供が中止になりました。夜のNHKニュースでも流れていましたが、全国的なニュースになったようです。
中日新聞速報の後のニュースによると、大鍋の中に発見されたコバエの数は「約10匹」、その他の調理器具などに付着していたコバエも合わせると「数百匹」とされています。
調理前に発見されたことで、コバエの混入した給食を提供してしまうという事態を避けることができたようです。
昨日の朝、ある人と学校給食のコバエ混入のことが話題になりました。その時点では、その日の関市の小中学校の給食がコバエのために中止になるとは思いもよりませんでした。
こんなやりとりでした。
Aさん 「私、学校給食のことに関心があるわ。このまえもパンにコバエが入ったでしょ。」
さわたり 「ああ、可児市の給食のパンのことですね。」
Aさん 「それでパンからハエを取り除いて食べさせたり、その次はご飯にクモが入っていて全部捨てたり・・・。やっぱり、給食は教育委員会がやるより民間でやってもらったほうがいいんやない? そうすれば、民間は競争があるからしっかりやってくれると思うけど、さわたりさんどう思う?」
さわたり 「でも、可児市の給食のパンは、民間のパン工場で作ったものですよ。」
Aさん 「え? そうなの?」
Aさんは、可児市のコバエ混入で教育委員会の対応を批判するテレビ番組などを見て、「行政はだめ。給食は民間にまかせたほうがいい」と思ってしまったようでした。
関市の学校給食センター調理が民間委託にされようとしていることについて、私が考える問題点をお話ししました。「いろいろむずかしいんやねぇ・・・」と言ってみえました。
今回の関市学校給食センターのコバエの件も、誤解して「行政の管理が悪いから、給食センターの調理ができなくなった。やっぱり、民間に委託したほうがいいのではないか」と思う人が出てくるのではないかと気がかりです。管理がしっかりしているからコバエの混入を未然に防ぐことができたというのが本当のところです。
コバエの大量発生時には、窓を閉め切っていても入ってきてしまいます。その進入を防ぐことはとてもむずかしいものです。そのことを知らないと、誤解が生まれてしまうような気がします。
「女性調理員(56)が調理前の大鍋の中にコバエがたまっているのを発見」
引用した記事の中のこの箇所に、ぜひ注目してほしいと思います。(赤線を引いておきました。)
関市学校給食センターは直営です。
毎日8千食を作る同給食センターでは、35人の調理員が3チームに分かれて仕事をしますが、おそらく「女性調理員(56)」は、そのチームリーダーではないかと思います。安全でおいしい給食を提供するために長年がんばってきた「給食調理のプロ中のプロ」です。
当たり前のことかもしれませんが、「よく調理前に発見してくれた」と思って、私はこの記事を読みました。そして、大鍋の中のコバエが10匹だからと軽視せず、他の調理器具やトレーなどを点検したということも、これも当たり前と言えばその通りですが、良かったと思います。
その当たり前のことを一日も欠かさず続けてきて、関市の学校給食センターは、食中毒のような大きな問題を起こしたことがありません。職員は、そのことに誇りをもって働いているはずです。
一方、当たり前のことができなかったのが、可児市に給食のパンを納入した民間のパン工場ではなかったかと思います。
それなのに「直営はだめ、民間がよい」という話になるのでは、あまりに無念です。
先ほどのAさんの話に、「民間は競争があるからいい仕事をする」という話がでてきました。これは、「民間でできることは民間で」というスローガンと共に、公務の民営化や民間委託を正当化するために世間に広められた考え方です。しかし、「競争」は万能ではありません。そして、その「競争」の本質が、「利益を得る」ことを目標にしているということが見落とされがちです。
学校給食調理の場合、公務員である栄養士が献立を立て、食材も調達しますから、民間委託というのは、それを調理する労働力を民間事業者に依存するというだけです。したがって、民間事業者が調理業務を受託するたの「競争」は、いかにうまく人件費を安く上げて多くの利益を確保するかという競争に行き着くのです。
行政がおこなう仕事は「利益」を求めるものではないため、いわゆる民間の企業同士の「競争の効果」の話を、そのまま持ち込むのは注意をしなければなりません。
利益や損得よりも優先しなければならないもののためにおこなう仕事、それが公務員の仕事ではないかと思います。直営の下で給食調理を担う公務員は、「競争」がなくても子どもたちのためにいい仕事をしようと努力をしています、また利益をめぐる「競争」と切り離されているからこそ、その努力ができるという側面があります。
しかし、経験とノウハウをもつ関市学校給食センターの調理員は、1年後には他の職場に移されることになります。代わりに民間事業者にまかせて、パート中心の60人規模の調理体制がつくられようとしています。
安全管理も含めて、それで学校給食がよくなるとはとても思えません。
関市の学校給食調理はなんとか直営を維持できないかと改めて思いました。
関市学校給食センター調理業務の民間委託方針を再考をしてもらいたいと願っています。
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「学校給食の異物混入―対応マニュアルとコバエ」
2013年10月1日
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「学校給食調理の民間委託はムダの削減にならない」
2013年9月28日
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「御答弁は『誤答弁だった!」 2013年9月26日
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「学校給食調理は直営がよい」 2013年9月23日
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【参考】10月9日に報道機関向けに出された文書 ( ↓ )
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