関市の議会費
2014-04-08
関市議会が議員定数を削減し、次の改選で定数23にすることが決まりました。定数23は、平成17年の関市・武儀郡6市町村の大合併前の旧関市の議員定数と同じです。現在の市域に合併前は83名いた市町村議員が23名になるのですから、議員削減率は72.3%にのぼります。これは減らしすぎだと私たちの会派(日本共産党関市議員団)は反対しました。
しかし、私たちとは正反対の少数意見でしたが、「23名でも多すぎる。19名に減らすべきだ」という議員の方々もありました。その理由の中心は、議会費の削減だそうです。「議会(議員)も身を切る」という、近年の流行に乗った考え方です。
議会費を削減すべきなのかどうかを、改めて考えさせられます。
関市の平成26年度の議会費は3億297万9千円で、一般会計予算の0.82%を占めています。このうち、24人(定数25で欠員1)の議員報酬及び議員期末手当が1億6,838万6千円で、議会費の55.6%です。
市議会の年間予算を365日で割ると、1日当たり約83万円になります。関市議会のためにこれだけの経費を使っています。
この議会費が多すぎるかどうか、にわかには判断できません。0.82%という議会費の割合は高すぎるのでしょうか。
そこで、まず関市の一般会計予算に占める議会費の割合がどう推移しているのかを見ておきたいと思い、議会事務局に調査をお願いしました。
関市の議会費の推移を、今年度からさかのぼって見てみると、次のようになっています。
関市の議会費年度別比率(一般会計当初予算)
年度 議会費率 議会費 一般会計予算 (単位:千円)
H26 0.82% 302,979 36,848,000
H25 0.84% 309,387 36,786,000
H24 0.83% 307,908 37,108,947
H23 0.93% 354,993 38,335,000
H22 0.73% 264,261 36,088,000
H21 0.80% 268,726 33,753,000
H20 0.82% 281,568 34,150,000
H19 0.82% 277,857 33,962,000
H18 0.87% 293,500 33,888,000
H17 0.87% 292,465 33,554,000
H16 0.94% 255,434 27,241,000
H15 1.09% 258,421 23,801,000
H14 1.08% 283,679 26,166,000
H13 1.17% 283,460 24,293,000
H12 1.29% 288,954 22,367,000
H11 1.27% 293,723 23,114,000
H10 1.01% 288,001 28,540,700
H 9 1.22% 291,545 23,833,000
H 8 1.41% 290,469 20,670,000
H 7 1.42% 277,398 19,488,000
H 6 1.44% 274,974 19,138,000
H 5 1.23% 270,387 22,060,000
H 4 1.29% 261,770 20,340,000
H 3 1.42% 241,310 17,000,000
H 2 1.47% 227,070 15,400,000
H 1 1.51% 206,474 13,700,000
S63 1.45% 195,906 13,477,000
S62 1.48% 181,776 12,250,000
S61 1.45% 201,527 13,895,000
S60 1.42% 184,961 13,027,370
S59 1.50% 171,057 11,429,920
S58 1.54% 170,954 11,096,980
S57 1.46% 172,409 11,792,350
S56 1.40% 147,736 10,539,100
S55 1.47% 149,360 10,154,100
S54 1.42% 134,594 9,494,470
S53 1.60% 134,202 8,371,400
S52 1.62% 113,137 6,967,000
S51 1.72% 93,240 5,422,771
S50 1.95% 90,971 4,671,113
S45 1.99% 30,046 1,506,748
S40 2.14% 13,193 616,316
S35 1.73% 5,444 314,813
【2014年3月 関市議会事務局調べ】
「議会費の割合のピークが、いつ頃なのか知りたい」と調査を依頼したのですが、ずいぶんさかのぼることになってしまったようで、事務局にご苦労をかけました。
昭和35年~50年度の調査は5年おきになっていますが、昭和40年度の2.14%が議会費率の最高値です。どうやら半世紀ほど前の、昭和40年前後にピークがあったようです。
関市の予算で議会費率がピークの頃の昭和40年度(1965年度)と、平成26年度(2014年度)を比べてみると、
S40 → H26
議会費率 2.14% → 0.82%(0.38倍)
議会費 13,193千円 → 302,979千円(23倍)
一般会計予算 616,316千円 → 36,848,000千円(60倍)
ということがわかりました。
関市議会の議員報酬の改定は、平成7年12月11日に4%の引き上げが可決され、平成8年4月から現在の議員報酬になりました。それ以降、関市の議員報酬は19年間据え置きになっています。関市議会の議員報酬月額を、平成7年度と平成26年度で比べてみると、次のようになっています。
H7 → H26
議 長 450 → 468(千円)副議長 420 → 437
議 員 400 → 416
議会費の推移を改めて見てみると、平成8年度は平成7年度と比べて1,300万円余り増額となっており、議会費が2億9千万円台に伸びています。この主な要因が議員報酬の改定だったということです。
議員報酬月額は据え置きが続いていますが、平成25年7月~平成26年3月までの9カ月間は、臨時特例により8%の削減がおこわれました。これは人事院勧告を無視して国が国家公務員の給与引き下げをおこない、それに追随しておこなわれた市職員の給与引き下げに議員も合わせたものです。(不当な給与引き下げとして日本共産党関市議員団は反対しました。)
近年の議員の増減等と議会費の関係について、市議選のあった年度を中心に見てみます。
年度 議会費率 議会費 一般会計予算
H15 1.09% 258,421 23,801,000
↑ 議員定数を26名から23名に削減
H14 1.08% 283,679 26,166,000
平成15年4月の市議選は、市町村合併前の旧関市の最後の改選です。議員定数が3名削減され、23名となりました。
H17 0.87% 292,465 33,554,000
↑ 議員定数を23名から29名に増員
H16 0.94% 255,434 27,241,000
平成17年2月の合併により旧武儀郡で市議を選出する増員選挙が行われました。旧町村別の地域毎に選挙区が設定され、板取(旧板取村)1、洞戸(旧洞戸村)1、武芸川(旧武芸川町)2、武儀(旧武儀町)1、上之保(旧上之保村)1名の市議が選出され、旧武儀郡の議員は60名から6名に削減されました。関市議会の定数は、関地域23名と旧郡部選出の6名を合わせて29名になりました。議会費は3千7百万円増、一般会計予算は63億円の増です。
H19 0.82% 277,857 33,962,000
↑ 議員定数を29名から25名に削減
H18 0.87% 293,500 33,888,000
平成19年4月に旧6市町村別の選挙区で市議選がおこなわれました。定数は25名で、関地域(旧関市)が、定数23から19名に減、旧武儀郡5選挙区は合併後の増員選挙と同じく計6名という内訳。その後、市議1名が県議に転出し、1名の欠員ができました。
H23 0.93% 354,993 38,335,000
↑ H23市議選(定数25) 議員共済廃止
H22 0.73% 264,261 36,088,000
平成23年4月の選挙は、前回と同様の6選挙区で定数25。同年9月に、当時市議だった尾関健治氏(現市長)が市長選に出て、1名の欠員ができ、現在に至っています。しかし、平成23年度に、議会費が前年に比べて急増しました。これは、議員共済廃止の影響です。
平成23年度は、前年度と比べて議会費が9千万円余りも増えて、過去最高額の3億5千5百万円になっています。議員共済年金が廃止されたのに予算は逆に増えてしまったのです。制度廃止にともない、現職議員の年金掛け金の清算や、過去に議員だった方々の今後の給付継続のために、地方自治体に新たな負担が生じたためです。
この義務的負担を「議員共済給付費負担金」といいます。平成23年度の議会費約3億5千5百万円のうち共済費は1億2,007万1千円で、そのうち議員共済給付費負担金が1億1,044万6千円にのぼります。前年度の同負担金1,995万9千円と比べると、9千万円ほど負担金が増えました。現在も、この「議員共済給付費負担金」は続いていて、平成26年度予算では6,386万7千円となっています。
近年の議会費は、議員共済廃止にともなう議員共済給費負担金の増額によって押し上げられているということです。このことを知っている人はあまりいないのではないかと思います。議員年金が廃止されたこと自体を知らない人も多いと思います。
この議員共済給付費負担金の増額分を除けば、議会費はすでに切り詰められるだけ切り詰めている状態です。一般会計予算の0.82%という現在の関市の議会費の水準がそんなに異常なものとは私には思えません。
ついでに付け加えておくと、地方議員に退職金はありません。
関市の尾関健治市長は、選挙の公約を守り、今期の退職手当を返上することになっています。そのせいか、「議員も市長のように退職金を返上すべきだ」という意見の方にときどき出会い、驚かされます。これはまったくの誤解で、市長・副市長・教育長には退職手当が支給されますが、議員にもともと退職金はありません。退職金がないうえに、議員年金もなくなってしまったのが、地方議員の現状です。
議員削減や報酬減額で議会費をもっと減らそうという主張に対して、「それで地方議会がよくなると思いますか?」と私は問いかけたいのです。
地方分権の時代にふわさわしい議会の在り方が問われていると思いますが、目指すべき議会が、議員削減による、いわば ”少数精鋭” による議会なのだとは思えません。議員が少なければ少ないほど、多様な民意を反映することは困難です。それは2大政党制が、民意を十分反映できないのと同じです。
また、議員が少なければ少ないほど、行政をチェックする議会の力は弱まります。これは私の経験にもとづく実感でもあります。
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