否決された議員提案
2015-02-09
関市議会のことを書いておきたいと思います。
2014年12月25日の夕暮れ
関市議会は、2014年12月19日に平成26年第4回定例会を閉会しましたが、その6日後の25日には、平成26年第3回臨時会を開きました。
暮れも押し迫ったクリスマスに臨時会というのも前代未聞でしたが、その議題が直前の定例会で可決した議案の「再議」というのも、関市議会史上初めてのことでした。
「再議」というのは、地方自治法に定められた首長の権限で、議会の決定を不服として審議のやり直しを議会に求めることをいいます。
再議に付されたのは、
関市中山間地域振興基本条例の制定について
これは議員提案で制定されたものでした。関市の尾関健治市長は、12月19日の定例会最終日にこの条例が賛成多数で可決されると、即日、再議を求めたのです。
再議の結果、同条例は否決され、不成立が確定しました。
「関市中山間地域振興基本条例」の再議の採決結果
賛成 15名(明政会10 市政クラブ4 無所属1)
反対 8名(共産党2 公明党3 平成会2 無所属1)
出席議員 23名(欠席1名 欠員1名)
※出席議員23名(明政会所属の議長を含む)のうち、賛成が3分の2以上(16人以上)に満たないので否決が確定
あと1人でも賛成すれば再議でも可決になるところでした。
議員提案で一度可決された条例が再議にかけられ否決されたことは、それだけこの条例制定に大きな問題があったということを示しています。
地方議会で議員提案をおこなうということは、奨励されるべき良いことだと言われています。「地方分権の時代に地方議会がもっと役割をはたすべきだ」というのが近年の論調です。
しかし、関市議会における今回の議員提案は、手続きにおいても内容においても、大きな問題がありました。
手続きにおいての問題は、条例案についてまともな議論検討も合意もないまま、いきなり議会に上程して多数決で押し通そうとしたことです。
議会軽視と市長無視、ひいては住民無視の条例制定でした。
とりわけ、市長に一度も意見表明をおこなう機会を与えずに条例を制定しようとしたことは、議会制民主主義をゆがめる考えられない暴挙です。
明政会や市政クラブは、これまでこの条例について議会内で取り上げたことがありませんでした。事前の協議もなく、代表・一般質問で市長に問うこともなく、いきなり議員提案で上程したのですから、市長や市長部局は質問をすることも、意見を表明することもできず、ただ議会を見守っただけでした。
再議にかけることで、市長はこの条例に対する見解を初めて明らかにすることができたという有様でした。(市長の見解は文末のリンクを参照)
つまり、明政会や市政クラブがおこなったことは
市長を無視して条例を制定し、
その条例で市長を縛り従わせようとした
ということなのです。
市長は臨時会の「再議書」で、今回の条例制定のやり方について「議会と行政の信頼関係を損なう」と指摘しましたが、まったくその通りだと思います。
提出会派の良識が疑われる行為であり、議会制民主主義をゆがめ、破壊する行為です。
内容においては、条文を他市(新潟県上越市)の同様の条例からの丸写しで済ませており、関市の現在の方針や施策との整合性が検討されていなかったということです。
明政会や市政クラブが提出した条例案は、上越市の条文をそのままそっくり引き写したと思われる内容でした。地名やごく小さな文言の修正部分はありましたが・・・。
条文の中には、明らかに関市に不要な規定も盛り込まれていました。よく調べないで写してしまったという様子で、実は提出会派の中でもまともな検討がおこなわれていなかったのではないかと疑われるものでした。
もっとも、今回の定例会では、主に手続き面の問題に議論が集中し、内容的な問題については十分議論を深めることができませんでした。内容の善し悪し以前の問題で、このようなやり方での条例制定は許されないというのが、反対した議員の共通認識でした。
関市議会における今回の議員提案の条例制定をめぐる経緯は、とても異常なものでした。
再議による否決で、自民党系会派の暴走にかろうじて歯止めがかかった。
と、私は思っています。
自分の属する議会のだめなところを報告するのは残念なことです。
「市議会なんかいらない」
「議員をもっと減らせばよい」
といった声を、時折、耳にすることがあるだけに、なおさらです。
地方議会を無くせば首長の独断でことが進んでしまうことになります。
また、議員定数を減らせば素晴らしい議員が選ばれて、素晴らしい議会ができるというわけではありません。
関市議会にも、「議員定数を少なくした方が優秀な人が議員に選ばれ、良い議会になる」という考えの議員がいますが、これは事実に反する机上の空論です。
少数者による権力行使、少数者による支配を肯定するのは、民主主義に逆行することなのです。
近年、議会不要論や議員不要論をあおり、カリスマ的指導者を待望するような論調が見られますが、それは民主主義を擁護するものではないと思います。「強いリーダーシップ」というような言葉には注意が必要です。
少数意見を尊重し、議論を尽くし、できるだけ多くの有権者が納得できる結論を出す。そのために地方議会の質をどう向上させていくか。
これは有権者のみなさんにも一緒に考えていただきたいことです。
ちなみに、上越市議会は、平成20年5月に「中山間地域対策特別委員会」を設置し、2年かけて条例の「たたき台」をつくり、「市民の声を聞く会」や「パブリックコメント」を経て、平成23年6月に、議員提案で「中山間地域振興基本条例」を全会一致で成立させました。当然その過程では市長とのコミュニケーションもあったと推察されます。
その取り組みが評価されて、同市議会の「議員提案による『中山間地域振興基本条例』の制定」は、2014年11月に「第6回マニフェスト大賞 最優秀成果賞」を受賞しました。
関市議会の自民党系議員有志が、上越市を視察したのはその11月のことでした。そして彼らは、その翌月には、上越市の中山間地域振興基本条例とそっくりの条例案を関市議会に上程しました。
上越市議会が3年かけた仕事を、関市議会ではわずか10日ほどの日程(審議時間は実質1時間に満たない)で済まそうとしたのです。
これに賞を与えるとしたら、どんな賞になるのでしょうか。
明政会や市政クラブは、上越市議会がつくった条文を写すのではなく、その条例の制定過程の努力に学ぶべきであったと思います。
*** 参考リンク ***
日刊☆オゼケン通信
再議に付した中山間地域振興基本条例は否決されました
2014年12月25日付
http://oze-ken.cocolog-nifty.com/blog/2014/12/post-5fa8-5.html
*
上越市議会
中山間地域振興基本条例のページ
https://www.city.joetsu.niigata.jp/site/gikai/cyuusankanchiikishinkoukihonjyourei.html
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