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ごみ減量化の手法について

2015-03-28

先日の「サップ・フォーティーエイトのファンになれない話」という記事に、ごみ問題についてのコメントをいただきました。

ごみ袋値上げの件ですが、私は財政的な観点からでなく、少し負担を多くすることでゴミの量自体が低減されるのではないかと期待していますが、猿渡さんはどうお考えですか?

(野澤敬子さん 2015-03-23)

コメントをありがとうございました。 

「少し負担を多くすることでゴミの量自体が低減されるのではないか」という問題については、考えるところがあります。

尾関健治市長も、ごみ袋値上げの効果について、

ごみの排出抑制や分別の徹底につながる

と議会答弁で指摘していました。

確かにそういう側面はあるだろうと思います。

平成25年度に関市のごみ袋値上げが中止になった後に、関市のお隣の美濃市が「家庭ごみ有料化」による受益者負担を導入し、1枚10円だったごみ袋を、平成26年度から50円に引き上げました。

値上げを中止した関市。

値上げを実施した美濃市。

この2市の比較は、またとない検討材料になると思います。


今後の2市をくらべて評価するには、これまでの状況を把握しておくことが大切です。

美濃市のごみ袋値上げ前、平成24年度の家庭ごみ(生活系ごみ)は、1日1人当たり688グラムでした。(出典:「家庭ごみ有料化計画(案)」美濃市市民生活課)

少し古い資料で、関市と美濃市を比較すると

平成14年度の家庭ごみ(生活系ごみ)

 関市 614㌘/日・人

 美濃市 681㌘/日・人

※「関市一般廃棄物処理基本計画」(2013年12月3日)から

これは関市の市町村合併以前の数値ですが、この時点で関市がすでに家庭ごみ減量化に努力し成果を出していたことがうかがわれると思います。これは県内の市の中でも立派な成績だっと思います。

美濃市は、平成14年度(681㌘)と平成24年度(688㌘)をくらべると、ほとんど変化していないことがわかります。それだけに、平成26年度の家庭用ごみ袋の値上げがどういう変化をもたらすか、とても興味深いところです。

関市の家庭ごみ(生活系ごみの原単位)はその後増加して、平成16年度をみると、市町村合併前の1市2町3村(当時の関市、上之保村、武儀町、板取村、洞戸村、武芸川町)の合計で、1日1人当たり657.2グラムでした。

平成16年度の関市のごみ排出量

  生活系ごみの原単位 657.2㌘/人・日

  事業系ごみの原単位 354.0㌘/人・日

  総排出量原単位 1,011.2㌘/人・日

  参考:H14年度全国平均 1,111㌘/人・日

※「関市一般廃棄物処理基本計画」(2013年12月3日)から

それでも、全国平均よりまだ1割近く少なかったのです。この年度の終わりに近い平成17年2月に6市町村で合併をしました。

関市のごみの量は近年、減少傾向となっています。これは県下の全体的傾向です。

岐阜県が昨年5月にまとめた「過去5年間の各市町村の1日1人当たりのごみ排出量」という資料があります。これは市町村ごとの家庭ごみ(生活系ごみ)と事業ごみ(事業系ごみ)を合わせた総排出量の推移(H20~24年度)を示しています。

関市と美濃市の5年間の推移を抜粋します。

1日1人当たりのごみ総排出量

     平成20~24年度の推移

 関市 977→ 991→ 984→ 988→ 919㌘/人・日

 美濃市 1,015→ 994→ 968→ 1,013→ 1,005㌘/人・日

 岐阜県42市町村平均 1,013→ 991→ 960→ 959→ 932㌘/人・日

※「岐阜県の一般廃棄物 平成24年度一般廃棄物処理事業実態調査結果から」(平成26年5月 岐阜県)3頁の表2より

この期間、家庭用ごみ袋(大)1枚の値段は関市が6円、美濃市が10円でした。しかし、美濃市にくらべて関市の状況は悪くはありません。

参考として、両市の人口も見ておきます。

関市  91,322人(H27.3.1現在)

美濃市  21,982人(H27.2.28現在)

全国的にごみの排出量は、人口が多いほど1人当たりの排出量も多い傾向にありますが、関市と美濃市は逆になっています。平成24年度のごみの総排出量は、美濃市が関市よりも1日1人当たり86グラム(9.4%)多いのです。

現状をどう見るかということでも、色々なことが考えられると思います。ごみの量の変動には様々な要因があります。

このような現状を踏まえた上で、平成26年度の1枚50円への値上げによって、美濃市の家庭ごみの量がどう変化するか、副次的なものも含めてどのような効果が出て来るのかに注目したいと思います。


しかし、正直なところ、ごみ袋の値上げによる抑制効果に私は魅力を感じません。

実はここからが、野澤さんのご質問に対して、私がお伝えしたいことの本題です。(前置きが長くてすみません。)

端的に言うと、

ごみの排出抑制や分別強化をねらって家庭用ごみ袋の値上げをおこなうのなら、それはあまり良い方法ではない。

というのが私の考えです。

私が気にしているのは次のような点です。

ひとつは、「少しの負担」というのは相対的なもので、その負担が「少し」なのかそうでないかは、家計の状況等により人それぞれ異なるということです。

ごみ袋を週に2枚使うとすると、年間100枚くらい使います。1枚6円なら年600円ですが、1枚50円だと年5000円になります。あえて極端な例を持ち出しますが、1週間の1人分の食費が1千円の人と、1杯1万円のコーヒーを楽しむ人とでは、50円の重みがちがいます。

ゴミ処理だけのことではありませんが、受益者負担は消費税と同様で、経済的に苦しい人に対して実質的な負担がより重くなる性質のものだと思います。基本的に受益者負担は「平等」な負担を目指しており、社会的に「公平」であるとは必ずしも言えません。

この受益者負担の問題を別の角度からみると、ごみ袋を値上げしても、それが堪(こた)えない人がいるということをどう考えるかという問題があると思います。

ごみ袋が1枚50円でも、100円、200円であったとしても痛みがなく心配する必要のない経済力の人、あるいはごみ袋代の節約に興味など感じない価値観を持つ人に対しては、ごみ袋の値上げは何の抑制効果も発揮しない無力な方法ではないでしょうか。

負担増によるごみの排出抑制効果とは、弱い立場にある人に及ぼす効果のことだということを忘れてはならないと思います。それでごみが減ったとしてもうれしい気持ちになれません。

そして、もうひとつは、これまでごみを減らす努力をしてきた人はがっかりするだろうなということです。

努力をしてきた人ほど、ごみを減量する余地がありません。そういう人に対しては、ごみ袋の値上げによる抑制効果などというものはなく、単なる負担増にすぎないのではないでしょうか。これまでの市民の努力を無にするようなそんなやり方の先に、しあわせな未来があるのだろうかと思います。


ごみの排出抑制という観点からみれば、

家庭ごみへの受益者負担の強化は、弱者に鞭(むち)を入れてごみを減らすという手法です。同時にそれは、ごみを減らす努力をしてきた人たちをがっかりさせるやり方です。

そこで私が思うのは、これまでの関市がそうであったように、

受益者負担増によってではなく、別の方法でごみの減量化をすすめられないのだろうか。

ということです。

昨年、6月の関市議会でダンボールコンポストの普及・啓発を訴えたのも、このような思いからです。

関市はその後、元々ダンボールコンポストに取り組んでいた市民活動団体「環境ネットせき」と協力して、関市型ダンボールコンポスト「グリーンダンボくん」をつくりました。その「試験的な普及」を昨年度途中からおこなっていて、新年度も継続するための予算を計上しました。

家庭ごみの中で生ゴミは大きな割合を占めます。ダンボールコンポストは従来型のコンポストと違って、市街地の住宅や共同住宅でも利用可能です。これまで取り組めなかった家庭にも広げられる余地があり、生ゴミの減量化に役立ちそうだと思うのです。

ごみ袋の値上げが必要なくなるような、大きい構えのごみ減量化の取り組みを関市に期待しています。

そういう行財政改革のやり方のほうが、みんながしあわせになれるのではないでしょうか。

美濃市がごみ袋を値上げしたからといって、関市もそれにあわせる必要があるとは思いません。関市は自分の道を歩めばよいと思います。

「日本一しあわせなまち・関市」を目指す尾関市政に、ぜひ考えてもらいたいと思っています。

 

ショウジョウバカマ.jpg

ショウジョウバカマ


 

***リンク*** 

関市型ダンボールコンポスト

「グリーンダンボくん」

http://www.city.seki.lg.jp/0000006427.html


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コメント 1

野澤敬子

統計を交えた丁寧な回答をありがとうございました。なるほど、ゴミの減量に直接つながるとは言い切れないかもしれませんね。美濃市のごみ排出量の推移に興味が湧くところです。私の周りでは、ゴミ袋にかぎらず、値上げというものに反対している人が結構いたので、伺ってみました。
by 野澤敬子 (2015-03-30 19:49) 

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