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なぜ派遣労働を拡大するのか

2013-08-23

厚生労働省の有識者会議(座長:鎌田耕一・東洋大学教授、委員は7名→構成員名簿参照)による「今後の労働者派遣制度の在り方に関する研究会 報告書」(平成25年8月20日)が公表されました。

企業が1つの業務に使用できる期間を最長3年に制限する現行ルールを撤廃し、労働組合の同意を条件に人を入れ替えれば派遣を使い続けられるようにすべきだとする報告書をまとめた。(中略)企業にとっては、派遣が活用しやすくなり人件費の抑制につながるメリットがある。(岐阜新聞2013年8月21日朝刊「派遣『最長3年』撤廃を 厚労省研ー労働者入れ替え前提」抜粋)

派遣労働をいっそう拡大するという考えで、これではますます日本の賃金はさがり、内需も縮小していくでしょう。

進むべき方向がまったく逆だと思います。


このような労働政策が、国民の幸せを真剣に考えた結果なのでしょうか。

同研究会は、6月14日の第14回会合に、次の4団体を招いて公開ヒヤリングをおこなっています。

日本経済団体連合会、全国中小企業団体中央会、日本商工会議所、日本人材派遣協会 

いずれも、労働者派遣制度による「人件費抑制のメリット」を主張したのではないかと察せられます。特に日本人材派遣協会は、資料をたずさえて来て派遣拡大への積極的提言をおこなったようです。(文末のリンクで、その資料を見ることができます。)

この14回会合までの経過を報じたニュースがありました。

同研究会の委員7人がそろった会合はこれまでの14回の中で第2回会合1度だけで、事務局の厚労省サイドが急ピッチな議論の展開を念頭に委員の日程調整に腐心した様子が垣間見える。(アドバンスニュース 2013年6月24日「厚生労働省の「派遣制度の在り方研究会」8月の報告書作成へ最終段階に入る」抜粋) 

7人の委員全員そろったのはたった1回だけだそうです。このあと、2回の会合を経て、報告書が公表されました。

安部晋三政権が、こういった「有識者会議」を利用して、だれのための政治をやろうとしているのかを示しています。


近年の日本の経済政策では、富が大企業・富裕層に集中するという偏った結果を生み出し、格差が広がる一方です。

の大きな要因が、派遣労働をはじめとする不安定雇用の拡大です。この上、派遣労働を拡大し、「人件費の抑制」が進めば、賃金水準はさらに下がり、格差はいっそう広がることになってしまいます。


格差の広がりの中で「新富裕層」と言われる人たちが生まれているそうです。

NHKスペシャル「”新富裕層”vs.国家 ~富をめぐる攻防~」の再放送を興味深く観ました。マネーゲームで巨万の富を手中におさめた「新富裕層」が、税金の安い海外へ移住して、課税を逃れているという話でした。

マネーゲームやIT関連産業などで稼いだ資産100万ドル以上の「新富裕層」は世界に1100万人。日本人では190万人いて、米国に次いで2番目に多いそうです。日本の人口を1億2800万人とすると、1.5%が「新富裕層」ということになるでしょうか。

番組では、シンガポールへ移住した日本人、プエルトリコに移住した米国人の例を紹介していました。どちらの国も税金が安いのです。

日本では証券優遇税制がおこなわれ、本来20%課税なのに半分の10%におまけしています。庶民のわずかな貯金の利息にも20%の課税をしておきながら、株の売買で得た多額の利益には減税をするという、何ともおかしなことをやっているのです。日本共産党は、こういう富裕層のための優遇税制をやめるべきだと主張しています。

最近では米国のオバマ大統領も富裕層への増税方針を打ち出しています。(番組の中でも紹介していました。)

しかし、「新富裕層」の中には、おまけしてもらっている10%課税でもがまんならないという人たちがいるのです。彼らは社会と共に生きようとはしないし、国家さえも必要としない。自分の人生に本当に必要なのは情報とカネだけだと考えているようです。金融経済が生み出した「モンスター」(番組の中で使われていた言葉)です。

カネの亡者になって国を捨てる人があるというのが現実ですが、そういったごく少数の人たちを自国に引き留めるために「富裕層に減税しよう」などと考える必要はないと思います。「たくさん稼いでいるから、それなりに税金を払ってもいいよ」という富裕層に国に残ってもらえばよいのではないでしょうか。

NHKの番組の見出しに、あえて異議をとなえれば、国家は新富裕層とたたかったり、彼らに特別に気をつかうことはありません。累進課税を基本とする所得に応じた社会的負担を要求すればよいのです。


新富裕層の海外流出はさておき、企業が海外に出て行ってしまうという問題はどうでしょうか。

それを防ぐために、

  賃金(人件費)を引き下げよう

  正規雇用を減らして派遣労働をふやそう

  法人税をもっと安くしよう

といった主張が幅をきかせています。

そうしなければ、企業も一部の新富裕層のように出て行ってしまうのでしょうか。必ずしもそうではありません。重要なことは、企業は、根無し草のような「新富裕層」とはちがっているということです。

株でもうける新富裕層は、最先端の情報インフラとカネさえあればいいと思い切れば、海外に移住できるわけです。しかし、企業はそんなに身軽ではありません。法人税で言えば、プエルトリコはわずか4%しか課税されないそうですし、人件費も安いと思いますが、日本の企業がこぞってプエルトリコに本社を移すというようなことはなりません。

働く人の暮らしを守りつつ、国内で企業活動ができるようにすることが大切です。

しかし、働く人の暮らしを守るという視点があまりに弱い。それをはっきり示したのが、派遣労働の拡大方針です。

私は、派遣労働拡大に大反対です。


***** リンク *****

厚生労働省職業安定局の政策立案のための有識者会議等(一覧表)

(会議の開催日、議題、資料等が公表されています。)

http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/2r9852000000ajmk.html

NHKスペシャル

"新富裕層" vs.国家 ~富をめぐる攻防~

http://www.nhk.or.jp/special/detail/2013/0818/

 

    


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