教職員の時間外勤務
2013-11-14
学校の教職員の勤務実態調査をおこなったところ、
時間外勤務が月69時間32分、
持ち帰りを含めれば月91時間13分
であったということです。
教職員は、「年齢が若くなるほど、時間外勤務時間が長くなる傾向」があり、「35歳以下の年齢層」については、持ち帰り仕事時間を含まない時間外勤務の平均時間だけで過労死ライン(月80時間)を超えています。
「勤務実態調査2012」をまとめた全教(全日本教職員組合)は、
平均値であるにもかかわらず、過労死の危険がある月80時間を超えていることは、教職員の長時間労働の実態が、一刻も放置できない状況にあることを示すものです
(「新聞全教」号外2013.11.10「勤務実態調査2012」特集号)
と訴えています。
調査は、昨年10月1日~7日の期間について、全国39都道府県の6879名分を集約したもの。
そのうち「教諭等」が5880名(全体の85.5%)で、
「教諭等」に限ってみると、
1カ月の平均時間外勤務時間は72時間56分、
持ち帰り仕事時間を含めれば95時間32分
に増えます。
教諭等の平均時間外勤務時間の分布は、100時間以上が21.3%、80時間以上が14.5%です。(これは持ち帰り仕事時間を含みません)
教諭等には、ほとんど時間外手当がつきません。ですから、これらはほぼ全部が事実上の「サービス残業」です。
同調査では「今の仕事にやりがいを感じる」との回答が81.5%に上る一方、「授業の準備をする時間が足りない」との回答が75.8%。
仕事のやりがいに支えられて、平日は早朝から深夜まで、そして休日も仕事をしてがんばり、無理をしている学校の先生達の姿がうかがえます。
調査の中の「意識調査」の集約結果は次のようになっています。
「教員の多忙化」の問題が指摘されるようになって久しいと思いますが、上記の調査結果を見ると、改善の必要があることは明らかです。
この実態を国はどうみているのでしょうか。
文部科学省のサイト内の「教員の多忙化」のページには、小中学校の教諭についての平成18年度の調査結果が示されています。
年間ベースの1ヶ月あたりの残業時間は、平日34時間、休日8時間である。
とのことです。
これにはページの下の方に枠で囲んだ但し書きがあります。
● 年間ベースの1ヶ月あたりの残業時間
※成績処理や授業準備などの持ち帰り業務は含んでいない。
平日のみ 約34時間 休日 約8時間
参考:昭和41年調査 約8時間(平日・休日)
平成18年度「文部科学省教員勤務実態調査」
「成績処理や授業準備などの持ち帰りの業務」は、なぜ調査からはずれているのでしょう。
調査年度も古いし、文科省は本気で実態を把握しようと思っていないのではないかと思います。(平成18年度のこの調査は文科省の研究委託で小川正人東大教授を代表とする研究チームが調査設計を行い、ベネッセが調査を実施したようです。単発の暫定調査で終わったようで、これより新しいものが見つかりませんでした。)
文部科学省の実態調査では1日あたりの「休憩時間」も調査していますが、夏季休業期の8月が44分、その他の月は6分~10分しか休憩がありません。
これは普通なら労働基準法違反ですが、教員の仕事は特殊なので、休憩がなくても違反にはならないことになっています。
教員の残業(時間外勤務)に原則として時間外手当がつかないのも同様です。
「時間外手当・休日手当」の規定は存在しますが、それは特に「命ぜられた時」に支払われるもので、そういうことは日常業務ではほとんどありません。もし、教員が「成績処理が間に合わないので残業したい」と校長に申し出たとしても、残業が「命ぜられる」ということはなく、「ダメ教師」の烙印を押されるのが関の山でしょう。先生達は勝手に(もう少し品良く言えば「自主的に」)残業しているという扱いが常態なのです。
たとえば授業のための教材研究をどこまでやるかは、考えようによっては際限がありません。これは教師という仕事の宿命のようなものです。だから時間外手当はなしということらしいのです。
その代替措置というわけではありませんが、人材確保法(学校教育の水準の維持向上のための義務教育諸学校の教育職員の人材確保に関する特別措置法。1974年成立)にもとづき、教員の給与には教員特別手当(基本給の4%)が上乗せされています。これを仮に残業代の代替措置と考えたとしても、それでは全然足りないほど、教員は時間外勤務をしているのです。
実際のところ、最低限のことをやろうとしても、勤務時間内に仕事を終わらせることができないのが今の教育現場であることは間違いありません。
意識調査の「今の仕事にやりがいを感じる」という項目で、「どちらとも言えない」、「感じない」という回答が2割近くあります。疲れ切った先生の顔が浮かんでくるようです。
この状況を改善するのが政治の役割だと思いますが、違う方向に向かっています。
財務省は、来年度から、公立小中学校の教員給与を1.7%削減する方向で文部科学省と調整に入ったそうです。(11月9日朝日新聞)
文部科学省の有識者会議「道徳教育の充実に関する懇談会」は11月11日、小中学校の「道徳の時間」を「特別な教科」に格上げし、検定教科書の使用を求める報告書案を公表しました。いじめ問題が社会的にクローズアップされる中で、今年6月に公布され9月に施行された「いじめ防止推進法」の中にも、「道徳教育等の推進」が「基本的施策」の筆頭に挙げられています。
過労死ラインまで「サービス残業」をさせながら給与をどんどん引き下げ、道徳の授業を充実させるために「教師の指導力の向上や教材の工夫」(産経新聞)が求められ、結果として「自主的な残業」を強いて更に教員を追い立てるのです。
こういう無理を通そうとすればするほど、学校教育の現場はますます上意下達の管理主義的な職場となり、教育はその活力をいっそう失うことにならざるを得ないだろうと思います。
こんなやりかたで、学校教育がよくなるとは思えません。
「授業の準備をする時間が足りない」(75.8%)、「行うべき仕事が多すぎる」(84.6%)と先生達が言っている。それをどうするのか。
そこから始めるべきだと思います。
マテバシイ(関市文化会館で)
最後にもう一つ。
こういう話をすると、必ず「民間はもっと厳しい」とか「嫌なら辞めればいい」とかいうようなことを言う人が出てきます。そういう主張は横暴な経営者の論理であって、いつの間にかその論理に支配されているのではないでしょうか。それは辛い現実を生きる世渡りの知恵としては理解できますが、働く者が皆そういう考え方になってしまったら自らの首を絞める結果になり、ともて生きにくい世の中になると私は考えています。
【 リンク 】
アピール「勤務実態調査2012」
全日本教職員組合 2013年10月22日
ページの下部に「勤務実態調査2012概要」があります
http://www.zenkyo.biz/modules/opinion/detail.php?id=388
いじめ」のない学校と社会を
――日本共産党の提案――
2012年11月28日 日本共産党
http://www.jcp.or.jp/web_policy/2012/11/post-501.html
論戦ハイライト
厳罰と「道徳」押し付け
豊かな成長に逆行
宮本議員追及
しんぶん赤旗 2013年6月20日付
http://www.jcp.or.jp/akahata/aik13/2013-06-20/2013062002_03_0.html
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